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レジリエンスの評価方法の確立(案)

1. 目指す評価手法

具体的には、次の要件を満たす評価手法の開発を目指す。

(1) 複数の地域社会のレジリエンスの現状を総合的に比較評価できること
(2) 同一の地域社会のレジリエンスの高さを、時間経過とともに総合的に比較評価できること
(3) 複数の組織のレジリエンスの現状を総合的に比較評価できること
(4) 同一の組織のレジリエンスの高さを、時間経過とともに総合的に比較評価できること

2. 評価手法の基本コンセプト

組織のレジリエンスの高さを評価するには、その組織が保有する各拠点のレジリエンスを評価し集計する必要があるが、各拠点のレジリエンスはその地域社会のレジリエンスに強く依存する。このため、地域社会のレジリエンスをまず評価する必要がある。このため、ここでは、まず地域社会のレジリンス評価手法を構築することを考えている。


例えば、電気・ガス・水道・道路・通信・医療・警察・消防等の社会インフラが整備され、かつレジリエンスが高い地域にある拠点は、拠点自体のレジリンスがあまり高くなくとも総合的に「レジリエンスは中程度」と評価可能であるが、社会インフラの整備が遅れ、かつレジリエンスが低い地域にある拠点は拠点自体のレジリエンスが極めて高くないと総合的に「レジリエンスが中程度」とは評価が出来ない。


次に、組織のレジリエンスの方向性であるが、地震の発生が懸念されない地域に高い耐震性は不要であるし、犯罪が多い地域には高い防犯性が必要になる。これをレジリエンスの方向性と言う。このレジリエンスの方向性は、地域により、時間により変化する。ここでは、各リスクに対し、地域と時間による換算表の構築モデルを提供することを考えている。


2.1 地域社会のレジリエンスの評価

まず、その地域社会で過去のある期間に発生した災害・事故・事件を確認し、整理し、発生頻度による換算値を算出する。
なお、この期間は、自然災害では数万年単位の噴火のように長いものから、犯罪のように20年程度の短いものがある。


換算値算出の次は、特定の工業団地や商業地域等市区町村の特定の地域について、次の項目を調査し、評価する。

 

(1)    地域社会のレジリエンスは関係するインフラについての供給維持力と復元力

       電力、ガス、上水道、下水道、通信、道路、鉄道、金融、医療、行政、その他

 

(2)    調査対象となる災害・事故・事件は次を考えている

       火災、安全事故、地震、水害、風害、雪害、感染症、火山、ICT事故、干魃、犯罪、その他

 

(3)    評価方法は以下のマトリックスを考えている
 

火災

安全事故

地震

基本値

発生

換算値

基本値

発生

換算値

基本値

発生

換算値

1

1

1

1.2

1

0.5

電力

A

 

 

 

 

 

ガス

 

 

B

 

 

 

上水道

 

 

 

 

C

 

下水道

 

 

 

 

 

 

通信

 

 

 

 

 

 

道路

 

 

 

 

 

 

鉄道

 

 

 

 

 

 

金融

 

 

 

 

 

 

医療

 

 

 

 

 

 

行政

 

 

 

 

 

 


電気と火災の交差項目にある「A」、ガスと安全事故の交差項目にある「B」、上水道と地震の交差項目にある「C」は
例えば、次のように評価する。

 

【電力と火災】

10: いかなる火災に遭遇しても、安全に供給される

9: 大規模な火災に遭遇すると、2時間程度供給が中断されることがある。

: ・・・・

2: 小火でも、12週間程度供給が中断されることがある。

1: 小火でも、3週間以上供給が中断されることがある。

 

【ガスと安全事故】

10: いかなる安全事故が発生しても、安全に供給される

9: 大規模な安全事故の場合は、2時間程度供給が中断されることがある。

: ・・・・

2: 小規模な安全事故でも、34週間程度供給が中断されることがある。

1: 小規模な安全事故でも、4週間以上供給が中断されることがある。

 

【上水道と地震】

10: 震度7に遭遇しても、安全に供給される

9: 震度6強に遭遇すると、1日程度供給が中断されることがある。

: ・・・・

2: 震度3に遭遇すると、12週間程度供給が中断されることがある。

1: 震度3に遭遇すると、3週間以上供給が中断されることがある。

 


2.2 組織のレジリエンス評価

組織のレジリエンスは、組織を構成する各拠点のレジリエンスを個別に評価し、それを更に総合的に評価することになる。
総合評価の際は、各拠点のウエイト付け(重要度付け)と各拠点の地域社会のレジリエンス評価が必要になる。

 

(1)    各拠点のウエイト付けは、次のマトリックスを考えている。

 

項目

拠点・事業所

社員数

有形財

無形財

IT

その他

換算値

合計

ウエイト

X1

Y1

X2

Y2

X3

Y3

X4

Y4

X5

Y5

本社

5

9

4

6.4

5

6

4

6

5

5

32.4

14.31

札幌支店

2

3.6

2

3.2

1

1.2

2

3

2

2

13.0

5.74

東京支店

3

5.4

3

4.8

1

1.2

1

1.5

1

1

14.9

6.58

大阪支店

3

5.4

2

3.2

1

1.2

1

1.5

2

2

13.3

5.87

福岡支店

3

5.4

2

3.2

1

1.2

5

7.5

1

1

18.3

8.08

中央研究所

3

5.4

4

6.4

5

6

3

4.5

2

2

24.3

10.73

関東工場

3

5.4

5

8

3

3.6

3

4.5

3

3

24.5

10.82

新潟工場

4

7.2

4

6.4

4

4.8

4

6

5

5

29.4

12.99

九州工場

5

9

5

8

4

4.8

4

6

5

5

32.8

14.49

東京

コールセンター

3

5.4

4

6.4

1

1.2

5

7.5

3

3

23.5

10.38

換算値・
合計値

 

1.8

 

1.6

 

1.2

 

1.5

 

1.0

226.4

100.00

1: 項目は一部のみを掲示している

2: 数値は「大きい方=比較した場合の重要度が高い」である

3: Xは比較したランクの数値、Yは換算後の数値となる

4: 「換算値」は、本来著しく異なる各要素を便宜的に比較し、重要度を決めるために使う値で、企業により、

         経営者により異なる

 

(2)    組織のレジリエンスを評価する経営資源は次を考えている

l   ヒト関係: 従業員、経営者、関係者など

l   有形財関係: 材部、生産設備、製品、建物、周辺環境など

l   無形財関係: 知財、ノウハウ、ブランド、競争の優位性、勤労意欲など

l   カネ関係: 販売機会、売掛金回収、賃料、設備レンタルなど

l   一般情報関係: 株主関係、従業員関係、地域社会関係など

l   ICT関係: データ、サーバー、ネットワークなど

l   インフラ関係: 電気、水、ガス、通信、行政、医療、物流など

 

(3)    調査対象となる災害・事故・事件は次を考えている

火災、安全事故、地震、水害、風害、雪害、感染症、火山、ICT事故、干魃、犯罪、その他

 

(3)    評価方法は以下のマトリックスを考えている

経営資源と災害・事故・事件の交差する項目の評価方法は、地域社会の評価方法に準じる。

 

火災

安全事故

地震

基本値

換算値

基本値

換算値

基本値

換算値

1

1

1

1.2

1

0.5

ヒト関係

経営者

管理職

従業員

関係者

有形財

材料

部品

生産設備

建物

周辺環境

製品

 


3. 評価手法の活用方法

本研究の成果として開発される、組織のレジリエンシーの評価手法は、次のような場面での活用が期待される。

 

(1)    他組織のレジリエンシーの高さに対する評価

一般に、企業が取引相手を選ぶ場合、他の条件に違いが無ければ、よりレジリエンシーの高い企業との取引を望むであろう。完成品メーカーが素材メーカーや部品メーカーを選定するケースが典型的な例である。

評価される側の組織(上の例では素材または部品メーカー)が、あらかじめ外部機関による評価を受けていれば、評価する側の組織(上の例では完成品メーカー)はその評価結果を利用すればよい。そうでなければ、評価する側の組織が自らの手によって、他の組織を評価することもできる。

 

(2)    自組織に対する評価

過去の自組織に対する評価結果を比較することで、自組織のレジリエンシーの向上(もしくは低下)を知ることができる。特に何らかのレジリエンシー向上策を実施した場合、その前後で評価結果を比較すれば、実施した対策の費用対効果を検証することができる。また対策の検討段階において、期待される効果をシミュレーションしてレジリエンシーの評価を実施すれば、対策の費用対効果をある程度予測することもできるであろう。

 

(3)    ベンチマーキング

同手法で評価される組織が増え、評価結果が公開されれば、組織のレジリエンシーのベンチマーキングが可能になる。同業種の中、同等程度の規模の組織の中、近隣地域の組織の中などで、自組織のポジションを知ることも可能になるであろう。

 

(4)    立地条件の比較

組織が新たな事業所の設置を検討する場合、この組織がよりレジリエンシーの高い事業所にしたい場合は、この手法による評価結果をもとに、よりレジリエンシーの高い候補地を選択することが可能になるであろう。逆に、例えば企業を誘致したい自治体や工業団地は、地域のレジリエンシーを高めた上で外部機関による評価を受けておき、評価結果を企業に対してアピールすることもできる。また、オフィスビル等の建物単位でレジリエンシーの評価ができれば、テナント募集時の呼び水としての効果も期待できる。